看板に「矯正歯科」だけを掲げている
矯正単科、学会認定医、が目安の一つ
最初に知っておいていただきたいのは、現在の「歯科医師法」では、歯科医であれば誰でも、「一般歯科」「矯正歯科」「小児歯科」「口腔外科」の4つを、診療科目として掲げることができます。また、専門医と看板に出すことは、まだ認められていません。したがって臨床経験が少なく、技術的にも簡単な矯正歯科治療のみを対象とする場合でも、「矯正歯科」と看板に掲げられることがあるということです。
では、あなたがよい矯正歯科医(診療所)を選ぶには、どういう点をチェックすればいいでしょう? 比較的判断しやすい目安として、いくつかのポイントを挙げてみましょう。
- POINT1 矯正歯科専門の開業医であること
- 看板などの診療科目が、「矯正歯科」だけかどうかを確認してください。「一般歯科」と「矯正歯科」の両方を掲げている診療所は、一人の歯科医が両方を兼任しているか、または、大学病院などからの矯正歯科医が、日を決めてアルバイトで矯正歯科を担当している場合と考えられます。
一人の医師が両方を兼任している場合は、専門知識や技術面で、若干疑問があります。また、非常勤の担当医の場合は、患者さんとのコミュニケーション不足や急なトラブルヘの対応、責任の所在がはっきりしないことなどが心配です。 - POINT2 日本矯正歯科学会の「認定医」資格をもつこと
- 認定医とは、学術団体である日本矯正歯科学会が定めている資格で、資格取得には、大学病院の矯正歯科での臨床研修歴が最低5年と、論文、自分で治した症例数が30例以上という条件が必要となります。さらに、この上に「指導医」の資格も存在します。ただしこれらの資格は、まだ看板や広告には表示できません。
また、日本矯正歯科学会にはホームページがあり(http://www.jos.gr.jp)、認定医の名前が全部各県別に出ています。そこで、自分が受診しようとしている医師が認定医かどうかの確認ができます。 - POINT3 日本臨床矯正歯科医会の会員であること
- 矯正歯科医会(通称)は、私たち矯正歯科専門開業医のネットワーク組織です。入会には、5年以上の矯正歯科臨床経験と会員3人の推薦が必要である上、理事会の承認を得る必要があります。全国に300人以上の会員がおり、転居による転医の際など、紹介や引き継ぎがスムーズに行えます。また、「患者さんのために」を目的とする共済制度が確立しており、万一、担当の矯正歯科医が病気になったりしても、治療が支障なく引き継がれる転医システムが確立しています。
- POINT4 育成・更生医療機関、顎口腔機能診断施設
- 先天性異常による不正咬合や、顎変形症に伴う外科矯正治療の場合、健康保険がきく医療機関です。それらの疾患の方には大切なポイントでしょう。
初診・診断時の対応からも判断できます
信頼できる矯正歯科医かどうかを判断するには、治療に入る前の対応の仕方もよく見てください。
- POINT5 納得できる初診相談
- 初診の際、矯正歯科医は患者さんの相談を受け、開始時期、期間、費用についてなど、概略的な治療のアウトラインを説明するのが普通です。よく考えて、納得していただいてから検査に入るのが良心的であると、私たちは考えます。
- POINT6 精密検査は充分にする
- 精密検査は診療を前提として行い、歯型、歯の写真、歯のレントゲン、頭部エックス線規格写真(セファロ)を撮ります。場合によっては機能検査も行います。
- POINT7 検査分析に則った診断と治療方針の決定
- 検査の結果を分析した上で治療方針を立てます。
- POINT8 インフォームド・コンセントをしっかりする
- 治療法、期間、費用などについてきちんと説明し、考えうる治療法とそれぞれのメリットやデメリットについても明確にお伝えし、最良と思われる方法を示すことがポイントです。患者さん自身にも、治療方法を選択できる環境を提供することが矯正歯科医には重要であると考えます。